魔性の車、Alfa 164が9年振りに復活した。
この20年間は何かに取りつかれたように、世界中の車をコレクションしてはその魅力の源の研究に明け暮れていたので、乗る機会を完全に失っていたのだ。
この164という車はスポーティーな走りと快適性を併せ持っている。’90年代を代表するスポーツセダンの一つに挙げられる。私の知るオーディオフリークの一人は、この164を二度手放したがその魅力が忘れ難く三台目を買ったという逸話もあるほどだ。
タイトルに魔性の車とあるのはこうしたところにある。お国柄や地政学的な環境等によってそうなるべくしてそう出来ている。道具とは必要に迫られて生まれて来る事がよく解る。
32年前の車であるが、走行距離は至って少なく2万キロちょっとしか走っていない。従って新車時に近いほどのコンディションを保っている。
この164はAlfaが初めて作ったF.F.車である。その名残がショックアブソーバーの傾斜した取り付けに見受けられる。横置きエンジンによるハンドルの切れ角を確保する為の苦肉の策であるがそれでもハンドルの切り返しが必要な事が多い。
一方走る速度に応じて前足で路面を掴んで手前にかく事を考えると、推進力や操舵性に於いては最適解のように思える。シングルカム特有のトルク感を差し引いたとしても、独特の高揚感を生み出している事と関係していると走ってみて感じるのである。
車検を取るに当たって部品の調達にも苦労した。
そして細部に至るまで徹底して整備して貰った。
このシンプルな足回りからは信じられない程しなやかな走りを見せてくれる。その動きは四つ脚の肉食動物そのものである。必要にして充分とはこの事である。
3リッターのメディアムクラスセダンにしては1,400キロと異常な位軽い。その割にシャーシは安定感ある低重心が確保出来ているから身のこなしがすこぶる良いのだ。
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